仕事のコト

vol.831 ギンギラギンにさりげなく



「原田くん、今度DMハガキつくるからよろしく」



そんなオーダーをいただいたのは、

納品予定の半年以上も前のことだった。


■種類/DMハガキ
■内容/改装に伴う休業案内
■ターゲット/既存顧客
■デザイン/完全おまかせ
■予算/なし
■その他/顧客の想像を超えてほしい




良い意味でも、悪い意味でも、

こんなに震えるオーダーはない。

「好きなようにやっていいから結果だけ出して」

ただ、それだけだ。



コストをかければいいというわけではない。

デザインに尖りを出せば良いというものでもない。

あくまで、そのお店らしさを失わないこと。

そして、そのDMを受け取った人が、

やっぱりこの店に通っててよかったと思ってもらえること。





わかる人には、わかる。

そんなこだわりを詰め込むことにした。



“現状維持は退化”

松下幸之助やウォルト・ディズニーが口にした言葉が、

まさに今回のリニューアルにも重なる。



日頃から、プロとしての矜持と向上心を持ち、

常に上を目指すオーナーの姿勢をコピーにさせていただいた。


表面は、コピーや改装後のヒントでもある

実際の図面を際立たせるための黒。

そして、裏面はコンクリート打ちっぱなしの

店舗をイメージさせるグレー。


印刷でも、合紙でもなく、

リバーシブル(ツートン)の厚紙を使用した。

大きさは、

DM=ハガキサイズ(100mm×148mm)という固定概念は捨て、

郵送可能でDMとしては馴染みの薄い

スクエアサイズ(150mm×150mm)に。



そして、両面に箔押し加工を施した。

表面は艶消しの銀箔、

裏面は艶有りの黒。

マットな用紙への箔押しは、

格段に雰囲気が良くなる。



予算の制限はなしとは言え、

好き放題やって馬鹿みたいな金額を請求するのはプロではない。

現実的なコストで前述のデザインと加工を行うため、

福井県の業者様に頼むことにした。



DM一枚の単価として見れば、高かったかもしれない。

ただ、今回の内容は、

季節ごとに出すキャンペーン告知や割引クーポンではない。

今後、お店が進む未来を示す道標だ。



昨日、オーナー様より

お客様からの評判がとにかく良いとのご連絡をいただいた。



これだから、この仕事はやめられない^^




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